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ご挨拶

奥平 智之

日本栄養精神医学会 会長

​医療法人 山口病院 副院長

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日本栄養精神医学会  創設への想い

 私は「Nutritional Psychiatry」という概念を2014年に「栄養精神医学」と訳して日本にその概念を広めました。この発信が、日本における栄養精神医学の第一歩となりました。その理念に共鳴してくださった全国の多くの精神科医の先生方のご賛同とご尽力に支えられ、2016年、私が中心となって仲間とともに「日本栄養精神医学研究会」を設立致しました。以来、「メンタルヘルスは食事から」を合言葉に、全国の多くの先生方と症例検討会や講演活動を重ねながら、全国に理解と実践の輪を広げてまいりました。

 そして10年の歩みを経て、2025年10月12日の10周年記念学術総会において、多くの先生方の支えと協働のもと、私は研究会を母体として「日本栄養精神医学会」を創設し、法人化を宣言いたしました。

 同時に、学会の理念と臨床研究の成果をまとめた学術誌『日本栄養精神医学会誌(The Journal of the Japanese Society of Nutritional Psychiatry)』を多くの先生方の協力を得て創刊致しました。この学会誌の発刊は、多くの先生方と共に築き上げてきた栄養精神医学の歩みの節目であり、日本における新しい医学の潮流を象徴する出来事です。

 

 栄養精神医学は、「食と心」の関係を科学的に解き明かし、精神医学・心理学と、栄養学・代謝学を横断する新しい学際領域です。そして、「食が心を育む」ことを伝える医学でもあります。鉄や亜鉛、ビタミンB群などの不足が抑うつや不安、認知機能低下の一因であることを明らかにし、臨床的に有効な介入指針を提供しつつあります。また、腸内環境、炎症、酸化ストレス、各種代謝経路など、多面的な観点から病態を理解し、治療戦略に活かす試みも進んでいます。

 私は、栄養医学を精神医学と融合させることで、診療レベルが大きく向上しました。漢方治療や抗うつ薬などの薬物療法で改善しなかった患者さんが、栄養学的アプローチによって劇的に回復する例を数多く経験しました。この経験を通して、栄養面からアプローチする精神医学を広めれば、より多くの患者さんを救えると確信しました。そのためには、精神科や心療内科の医師が中心となり、医療関係者やヘルスケア従事者と協力しながら、栄養精神医学を学び合い、情報交換ができる継続的な仕組みが必要だと感じました。

 学校や職場のメンタルヘルス対策においても、栄養精神医学の視点が取り入れられることで、メンタル不調の予防に大きく貢献できると考えています。

 

 精神科や心療内科の外来を訪れる患者さんは年々増加しています。不登校、不眠症、発達障害、適応障害、遷延するうつ病、パニック症、社交不安症、強迫症、月経前症候群、依存症、摂食障害、躁うつ病、統合失調症、そして認知症など――その背景には、栄養や代謝の乱れが関与していることが少なくありません。

 今後、精神科医療は国内外で大きな変革期を迎えます。本学会は “The Japanese Society of Nutritional Psychiatry” として、世界に向けて「食と心の医療」を発信し、国際的な学術交流を推進してまいります。そして、栄養精神医学に精通した「食と心の専門家」を育成し、「食と心の認定施設」を全国に広げていきます。栄養精神医学を取り入れた医療が、日本全国どの医療機関でもごく普通に受けられる社会をつくることが、私たちの使命です。

 メンタル不調で苦しむ人、自殺に追い込まれる人を一人でも減らすために、食事や栄養の大切さを共に広めていきましょう。

 

日本栄養精神医学会 会長・創設者

『日本栄養精神医学会誌』創刊者・編集長 

奥平 智之

2025年10月吉日

  

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